塾長トーク 2010年9月 @文京区 公立中高一貫対策
塾長トーク 9月
野分(のわき) たとえ、叩きのめされても
「野分」とは、野の草木を分けるように吹く強い風、つまり、台風のことです。
特に立春の日から数えて二百十日から二百二十日に吹く強い風のことをさしたようです。
この日は、台風が来る確率の高い日として、江戸時代から暦にも記されています。
ところで、「台風」という言葉。日本語のように見えますが、実は英語のtyphoonに漢字を当てたものです。
気象観測技術が進歩して、予測はできるようになりましたが、それでも、台風は毎年、大きな被害をもたらしています。
荒れ狂う自然の猛威を前にするたび、人々は叩きのめされ、それでもまた、乗り越えていく……。そんな営みを繰り返してきたのですね。
「美人の日本語」(幻冬舎)より
「正しい日本語で心豊か」
読売新聞社が、「日本語検定」の意義に賛同し、次回11月の検定から「特別協賛」の形で協力することになりました。作家の椎名誠さんと角田光代さんの対談記事のタイトルが、「正しい日本語で心豊か」です。日本語の向上が生活を豊かに、幸せにするという内容です。ことばに対しての椎名誠さんのコメントをひろってみます。
「言葉は頭で考えるのではなく、全身で感じ取り、編み出していくものだと思うんです。宮沢賢治は晴れ渡った空の下の山を、『うるうるもりあがって』と書いた。子どもの頃にそんな新鮮な表現に触れ、言葉の可能性を感じていました。結局、感性なんですね。SF小説を書くときは現実にはない世界なので、結構、自分で言葉を作ります。ある種、快感です。思うのは日本語の幅広さ。もっと違う言い方があるんじゃないかと類語辞典を引くと、似たような言葉の多さにがくぜんとする。もう言葉の海ですね」
「言葉は人の魅力度にも関係する。恋愛相手をくどく時だって、『超好き』では全然、真実味がない。僕の父は小学生の時に亡くなったが、先生がお通夜のときに僕を勇気づけるために、かけてくれた言葉がある。言葉自体は忘れてしまったけれど、しみじみね、ああそうか、やっぱりでっかく生きていこうと、思ったことは覚えている。ピカッと光る黄金のような言葉があったんですね。だから、その人のことは忘れない」
角田光代さんのコメントは、「社会との接点」という視点です。
「スーパーに行くと毎回、『レジ袋、ご入り用ですか?』と言われるんです。袋を持っていないのは見えているはずなのに。『袋を持ってこい』という意味だと感じ取って、もう嫌になってスーパーに行くのはやめました。社会では語彙が少なくなって、そんな『テレパシー能力』が発達したのかもしれません。満員電車で携帯電話が鳴っただけで全員がぱっとその人を見つめる。慌てて電話を切る。あの無言の非寛容さが広がっていくとちょっと怖い」
椎名さんが「みんなストレスの塊で一触即発です。いろんな場面で、普通に言葉が出るようになればいいと思うんだけども」と。
角田さんが続けて、「自分の言葉がないのはしんどいですね。成長期に言葉を獲得してしれば何か不快なことがあった時、口に出して言える。持っていないと、はけ口が見つかりずらい。若者が『ムカツク』と言いますが、実はいらだちではなく、悲しさや悔しさかもしれない。その中間かもしれない。気持ちをはき出す出口となる言葉がたくさんあれば、それだけ楽になるはずです」「私にとって言葉とは、社会との接点です。今、私が私としてかろうじていられるのは、言葉を使って、自分が何に違和感を、不満を、怒りを感じたのかを考え、伝えようとしているからだと思います。自分の言葉を持っていれば、いつか必ず言葉の合う人が現われて、なぜこんなにストレスを感じずにしゃべれるのだろうと思える時がきっと来る。それはものすごく強い喜びです。日本語を学ぶ人には、そんなことも心の片隅に置いてもらうとうれしい」と。
正しい日本語を身につけるという当たり前のことが、できにくい時代になってきました。情報が氾濫し、言葉の乱れが指摘されている今だからこそ、「日本語検定」や「言語力検定」の必要性を感じます。
■日本語検定:NPO法人「日本語検定委員会」が年二回、全国の約一〇〇〇会場で実施。一級から七級までの七段階。一級を取れば、日本語の最上級の使い手と見なされる。「敬語」「文法」「語彙」「表記」「言葉の意味」「漢字」の六分野から出題。日本語の総合力を試す。一級?三級を卒業に必要な単位の一部として認める高校や、推薦入試で点数を加点する大学も増えている。二〇〇六年発足。昨年は、九万三千人が受検。
■言語力検定:(財)文字・活字文化推進機構が二〇〇九年に開始。OECD(経済協力開発機構)主催・PISA(学習到達度調査)の問題作成方法に基づき、国際基準に沿った言語力を測定。一級から六級までの六段階。文章や図表、グラフなどから情報を取り出し、解釈し、評価する力、すなわち論理的な「思考過程」を重視。これらを養うことは、国語だけでなく、数学、理科、社会、英語などすべての学科の学力向上の基盤となる。