塾長トーク
心と響き合う読書案内 2009年8月
心勝り(こころまさり) 昨日の自分より今日の自分
思いのほかすぐれていること、姿かたちよりも心がしっかりしていることを「心勝り」といいます。考えてみれば、すぐれているとか、勝っているという時、比べているものがあるはずです。
そして、どちらを上とするかを決めるルールが存在するはずです。
でも、心の中には、ひとりひとり違うルールが存在するのですから、比べるなんて不可能ですね。
優しいことがすぐれているわけでもない。努力家が偉いわけでもない。本当に、心勝りのする人は、自分自身の心の中にちゃんとルールを持っていて、昨日の自分より勝っている、今日の自分に喜びを感じることのできる人だと思うのです。
心と響き合う読書案内
「博士の愛した数式」や「ミーナの行進」などで知られる小川洋子さんが、未来に残したい文学遺産を紹介するラジオ番組、東京FMの「Panasonic Melodious Library」で、パーソナリティとして、一年分お喋りした内容が一冊の本になっています。(PHP新書2009.3.2発行)
日本のラジオやテレビの世界で、真正面から文学を取り上げた番組は、ほんの僅かしかないことを残念に思われて、文学が主役になる番組という点に心惹かれて、取り組まれたそうです。
最新のベストセラーであれ古典であれ、その魅力について語り合ったり疑問をぶつけあったりする場、
個人的な営みである読書ですが、電波を通して文学的な喜びを分かち合う場にしたいと考えて企画されたようです。当初は本にする計画はなく、回数を重ねるにつれ、活字にしておきましょうとの声があがり形になりました。
本を選ぶ際に最も配慮したことは、季節感だったということで、春夏秋冬の四ブロックに構成されています。また、文学遺産として長く読み継がれてゆくであろう本を選ばれているので、本の種類は多岐に渡っています。
親の世代は、昔読んだ本に再会するきっかけにもなるので、この夏休みの「読書感想文」は、親子でチャレンジするいい題材になりそうです。本の題名をすべて載せておきます。
第一章 春
「わたしと小鳥とすずと」金子みすゞ 一個人の感情を超えた寂しさ、せつなさ
「ながい旅」大岡昇平 謝罪する時にこそ、人間の本質があらわれる
「蛇を踏む」川上弘美 冒頭から読者を底なし沼に引きずり込む小説
「檸檬」梶井基次郎 日本的な感性の中に、エンジニア的な観察眼を持ち込む
「ラマン」マルグリット・デュラス「十八歳で年老いた」少女を描く自伝的小説
「秘密の花園」バーネット 自然と向き合うことで、自らが生きる意味に触れる
「片腕」川端康成 貴女なら、ご自分の体のどこを男に貸しますか?
「窓際のトットちゃん」黒柳徹子 大人と子どもの理想的な関係
「木を植えた男」ジャン・ジオノ 仕事の成果が見られないことの喜び
「銀の匙」中勘助 少年の描写において、並ぶもののない名作
「流れる星は生きている」藤原てい 子どもを守ろうとするすさまじい母親の愛情
「羅生門」芥川龍之介 飾りのない文章こそが美しい
「山月記」中島敦 男はなぜ虎に変身したのか?
第二章 夏
「変身」カフカ 人間が虫になる不条理よりも不気味なもの
「父の帽子」森茉莉 父に溺愛された娘の自由自在な精神
「モモ」ミヒャエル・エンデ 時間を心で感じられなくなったら読みたい本
「風の歌を聴け」村上春樹 言葉では書けないことを言葉で書く
「家守綺譚」梨木香歩 どれくらいの不思議まで人は許せるのか
「こころ」夏目漱石 恋とは罪悪であり、神聖なものである
「銀河鉄道の夜」宮澤賢治 「永遠」を感じることで、気持ちが楽になる
「バナナフィッシュにうってつけの日」JD・サリンジャー 誰の心の中にもバナナフィッシュはいる
「はつ恋」ツルゲーネフ 人間の複雑さを映す鏡としての父親
「阿房列車」内田百? 生産性のない、無目的な旅が持つ自由
「昆虫記」ファーブル 神様が施した秘密のしかけを、味わって読む
「アンネの日記」アンネ・フランク 言葉によって、人間は自由になれる
「悲しみよこんにちは」フランソワーズ・サガン 自分の理論に合わない人を受け入れられない悲しみ
第三章 秋
「ジョゼと虎と魚たち」田辺聖子 男の子なら愛さないではいられないジョゼの女心
「星の王子さま」サン・テグジュぺリ 肝心なことはいつでも心の中にある
「日の名残り」カズオ・イシグロ 慎ましさが美しい、英国の執事の物語
「ダーシェンカ」カレル・チャペック 本当に犬を愛している人が描いた極上の犬本
「うたかたの日々」ポリス・ヴィアン 常識無視の純愛小説
「走れメロス」太宰治 研ぎ澄まされた肉体のように美しい文章
「おくのほそ道」松尾芭蕉 「荒海や佐渡によこたふ天河」は数学にも通じる
「錦繍」宮本輝 一通ごとに成長してゆく、元夫婦の往復書簡
「園遊会」マンスフィールド 死の意味を一瞬でつかみとった少女の感受性
「朗読者」ベルンハルト・シュリンク 強制収容所で犯した罪を償うために本を読む
「死の棘」島尾敏雄 たった一つのことを書き尽くした小説
「たけくらべ」樋口一葉 ちりめんの赤色に映る恋の哀切
「思い出トランプ」向田邦子 手を震わせながら一枚一枚めくっていくトランプ
第四章 冬
「グレート・ギャツビー」スコット・フィッツジェラルド 絶望という一点にのみ突き進んでゆく悲劇
「冬の犬」アリステア・マクラウド 厳寒の島に暮らす少年と犬の別れを淡々と描く
「賢者の贈りもの」O・ヘンリ クリスマスの話には貧乏が似合う
「あるクリスマス」T・カポーティ 互いに愛を求め合いながらすれ違う父と子
「万葉集」 「自分のために詠まれた歌」が、必ずある
「和宮様御留」有吉佐和子 和宮様は替え玉?女性はたくましく、男性は腰砕け
「十九歳の地図」中上健次 主人公の理由なき怒りに、若者は共感必至
「車輪の下」ヘッセ 明日のことを気にしない子ども時代の大切さ
「夜と霧」V・E・フランクル 究極の残酷さを描きながらなお、世界の美しさを伝える
「枕草子」清少納言 刺繍の裏は「むつかしげ」
「チョコレート工場の秘密」ロアルド・ダール チャーリーとともに親子で楽しむ工場見学
「富士日記」武田百合子 天才の日記は献立を読むだけでも楽しい
「100万回生きたねこ」佐野洋子 ほんとうに死ねるということは、幸せなこと
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