塾長トーク
気持ちを伝えたい 2010年1月 @文京区 学習進学塾
福寿草(ふくじゅそう) 小さな花に託した、たくさんの思い
元日草(がんじつそう)、朔日草(ついたちそう)とも呼ばれます。まさにお正月の花です。南天と合わせて寄せ植えにされるのは、「難を転じて福となす」という語呂合わせだそうです。
人生には、「五福」といって、五つの福があるとされてきました。 長寿(寿命が長いこと)、富貴(財産に不自由なく、その人の地位が尊ばれていること)、康寧(身体は健康、心は安定していて穏やかなこと)、好徳(好んで徳を積むことができること)、善終(臨終を迎えるときに、心残りなく、安心して現世を離れることができること)です。 そして、「寿」という言葉には、それらの福を言葉で祝う意味があります。
花の少ない一月という時期に、鮮やかな黄金色の花を咲かせてくれるのが、福寿草、そんな小さな花に人々はたくさんの思いを託したのでしょう。
「美人の日本語」(幻冬舎)より
気持ちを伝えたい
熊本県の南阿蘇村立久木野小4年の藤崎未夏(みか)さんの作文「気持ちを伝えたい」が全国に共感を広げています。内閣府が障害者週間に合わせて募集したコンクールで総理大臣賞を受賞した作品です。読売新聞「編集手帳」(12月6日・13日)で紹介され、12月10日付の社会面で写真入りの記事になりましたので、読まれた方も多いことでしょう。首相官邸のホームページで鳩山内閣のメールマガジン第9号を開くと、未夏さんのメッセージとともに作文全文へのリンクがありますので、ぜひご一読を。
はじけるような笑顔で縄跳びをする未夏さんの写真に胸が熱くなります。生まれつき左足がない未夏さんは、歩き出した頃から義足で暮らしています。運動会の練習で半ズボンをはいた時、ひざ下につけた義足を初めてみた一年生から「にせ物の足」と言われます。「義足を知らないだけで悪意はないはず」と担任の先生に勧められ、勇気を出して、一年生の教室でありのままを話したことにより、理解が広がり、未夏さんはショックを乗り越えたのです。その体験を作文にしたのです。
未夏さんの将来の夢は作家で、今はパラリンピックへの出場を目指し、バスケットボール部に入っています。来年もまた、成長した姿を作文に書きたいとのことで、楽しみです。可能性を大きくひろげてほしいものです。
もう一つは、「第10回ドラえもん大賞全国作文コンクール」(小学館主催)の記事です(毎日小学生新聞11月29日付)。
今年のテーマは、「泣いたこと、笑ったこと、怒ったこと」。審査員を第1回から務めている宮川俊彦先生(国語作文教育研究所)の講評と作文の書き方や普段の心構えについてのお話しがとても参考になると思いますので紹介しておきます。
「今回はいい作品が多く、審査員の先生方を悩ませるほどでした。日常のちょっとした出来事を素材にしながら、心の動き、人との関係、場面をとらえる目の動きなどがうまく表現されていて、作文というよりは作品といった方がよいほど、芸術性の高いものになっていて感心しました。(小学館の学年別学習雑誌のホームページに入賞作品が掲載されています) ここ数年、子どもたちの言葉は豊かになってきていて、自分の思いやエピソードを、物語的にスラスラと書いていく力はぐんと上がりました。でも、さらに高いところを目指すならば、一つのことにこだわって、深く見ていく目を養ってもらいたいと思います。『木を見て森を見ず』という言葉があります。一本の木だけを見るのではなくて、全体を大きくつかまなければダメだという意味です。でも逆に、一本の木をよく見ることで、森全体のようすやそこに生きる生態系を分析し想像することもできるのです。これもまた科学的な認識方法の一つです。このように、一つのことにこだわっていく目も作文には必要ですから、そういう目も養ってほしい。」
「虫が好きなら虫のこと、歴史の人物が好きならその人のことにこだわって、徹底的に調べて分析し、想像し、類推して自分の考えや思いを書いていく作文もあっていいのです。国語が苦手であっても、理科が好きな子、算数が好きな子も、自分の興味を深めていけば書くことがたくさんあります。作文は、国語のなかの一単元ではなくて、全教科で学習した知識や、あなた自身の体験の集大成なのです。」
「作文は、書く内容がなければ書けません。それには日々、書くための素材を蓄積しておく必要があります。素材は日常の体験の中にもたくさんあります。例えば、飲み物を飲んでも、おいしかった、冷たかったとしか思わない人と、色を見たり、指の感触を感じたり、舌で味わったり、いろいろなことをして感じながら飲む人とは格段の差があります。そういう細かな感性をもって周りを見つめていくこと。これが素材の蓄積につながります。そういう感性を、本や漫画を読んだり、映画を見たりするときにも持ち続けていき、あれを書いてやろう、これを取り上げてみようとか考えてみる。つまり、自分が書くために読む、書くために見るという手法があってもいい。」
「また、新聞を読むことも大事です。私は子どものころ、新聞のコラムを毎日書き写していました。いろいろな言葉の使い方を知ったり、文の調子や流れ、展開をつかむことができます。最初は800字を写すのに2時間くらいかかっていましたが、慣れてくると10分でできるようになりました。そのうち段々と、自分ならこう書く、自分ならこう考えるというふうに自分で書き換えていくようになります。そういう『問い直し』がとても重要です。自分で考える力がついていくのです。」
「文章を書き慣れるには、毎日、日記をつけることをおすすめします。例えば、『今日のめそめそ』『今日の空』『今日のママ』でいいのです。今日あったこと、今日見つけたこと、今日感じたことなど、一つのことだけに絞って『ことだけ日記』を書いてみましょう。一つのことに絞れば、毎日続けられるでしょう。無理して長く書く必要はありません。ときには、1行、5行、ひとことでもかまいません。何を書いていいかわからないときには、寝る前に、目をつむって一日を振り返り、再現してみること。これが重要です。そして、印象に残ったことを書いてみればいいのです」とのコメントでした。
2010年、まずは、日記を書くことにチャレンジしていきましょう。
35.9冊 2009年12月
健気(けなげ) 健やかな心
健気は、普通ではない、特別だという意味の「異(け)なりげ」という言葉が、変化したものだといわれます。 昔は、どちらかというと健康だという意味で使われたようです。 健康だということが、普通ではない、貴重な時代だったのでしょう。
やがて、勇ましいという意味や、心がけがしっかりしている、まっすぐ困難に立ち向かう、という意味でも、使われるようになっていきました。 これらは、心が健康であればこそ、できることだといえます。
現代は、身体の健康よりも、心の健康の方が当たり前のことではない時代になってきたようです。だからこそ健気な姿には、勇気づけられたり、感動させられたりするのでしょうね。
「美人の日本語」(幻冬舎)より
35.9 冊
文部科学省が1954年度より3年に一度実施している社会教育調査で、子供の読書活動が活発化している実態が浮かんできました。2007年度、図書館を利用する小学生が借りた本は、平均35.9冊で、前回の調査より2.9冊多く過去最多となっています。
図書館の数も調査ごとに増加して、調査開始時の4倍以上の3165施設となり初めて3000を越えています。文科省は「図書館は身近な公共施設で、特に子供への読書活動が習慣として定着しつつある」と分析しています。
1997年の学校図書館法改正で、子供に本のアドバイスをする司書教諭の配置が98年度から本格的に始まりました。子供の読書活動を推進する法整備など、その後も行われ、「朝の読書」に代表される全国一斉読書活動の実施率は、2000年度当初の7割から、08年度は小学校で9割を超えています。
ただ、司書教諭の配置は伸び悩んでいて、小学校では6割程度です。先月この紙面で「学校図書館活用教育フォーラム」の記事をちょうど紹介したところです。 自治体ごとに策定が定められた読書推進計画については、策定率36%(今年3月末)で都道府県ごとにかなりの差があります。
過日行われた行政刷新会議の事業仕分けでは、地域や家庭が子供の読書活動を支援する事業が「廃止」となりましたが、周囲の大人が良書を推薦したり、読み聞かせなどを通じて本の楽しさを教えていくような、家庭や地域を巻き込んだ取り組みが不可欠でしょう。子供の読書環境を整えていくことは、大人の責任です。(11月13日付「読売新聞」参考)
フィンランドに学ぶ
OECD(経済協力開発機構)のPISA(学習到達度調査)で、フィンランドは、3項目(数学的応用力・科学的応用力・読解力)すべてにおいて世界トップクラスの成績で、日本は学力低下が浮き彫りになった結果が発表されたことは記憶に新しいと思います。
フィンランドの学習法に高い関心が集まり、「フィンランドメソッド」をうたう読書法や作文の書き方、算数ドリルといった学習関連本も相次いで出版されました。知識詰め込み型の学習ではなく、自ら問題を発見して、自分の言葉で表現し、考える力を身につけるフィンランド式は大いに参考になると思います。
『フィンランドの教育力』(学習研究社)の著者で、10年間小学校教師をしていたリッカ・パッカラさんは、「フィンランドでは、母国語をとても大切にしています。新聞や本をよく読み、家族で社会のいろいろな問題について語り合う機会が多い」また「算数の問題を解かせる際には、日常生活の中で扱えるような文章題にして指導していた」「勉強は強制ではなく、楽しんで身につけるもの。そのためには、教師も子供のレベルに合わせてさまざまな方面から教えられるようトレーニングを怠りません」と語っています。
フィンランドがなぜPISAでうまくいったのか、フィンランド教育省は、次のように公式に説明しています。
1. 家庭、性、経済状態、母語に関係なく、教育への機会が平等であること。
2. どの地域でも教育へのアクセスが可能であること。
3. 性による分離を否定していること。
4. 全ての教育を無償にしていること。
5. 総合制で、選別をしない基礎教育。
6. 全体は中央で調整されるが実行は地域でなされるというように、教育行政が支援の立場に立ち、
柔軟であること。
7. 全ての教育段階で互いに影響し合い協同する活動を行うこと。仲間意識という考え。
8. 生徒の学習と福祉に対し個人に合った支援をすること。
9. テストと序列付けをなくし、発達の視点に立った生徒評価をすること。
10. 高い専門性をもち、自分の考えで行動する教師。
11. 社会構成主義的な学習概念
つまり、教育立国ということです。その背景には、大人も子どもも読書好きであることが上げられます。国民の約8割は、日に1時間の読書をし、一人当たりの図書館利用率は世界一ということです。
日本のとるべき道も教育立国のはずです。大いに学ぶべきでしょう。フィンランドのテストは、ほとんど作文(エッセイ)で、英語や国語はもちろん、化学、生物、音楽までもエッセイなのです。つまり、自分の考えを文章にして書かせるのが一般的なテストで、穴埋め問題などはなく、すべて記述式で、制限時間もないそうです。テスト前は、やたら分厚い本をかかえて、それを読んで知識を詰め込むことをしているようです。
教育レベルは世界一でも、アメリカで起きた乱射事件と同じような事件も起きてしまっています。どこの国でも、まったく問題がないなどということはありません。それでも、生徒がとてものびのびとして自由に毎日を過ごしているということが伝わってきます。
『フィンランド・メソッド』シリーズ(経済界)の編集者は、「現地には『フィンランド・メソッド』と呼ばれるような特別な教育法はなく、ふだんの生活から生きる力を身につけられるように、自分で考え、理由をはっきりさせて相手に分かりやすく伝えることを習慣化させている」と説明しています。 作文や読書感想文を書くとき大切なことは、書きっぱなしにせず、音読しながら、どうしてそうなるのか、筋が通っているか、相手が理解できるような言い方をしているか、といった点を改めて確認することです。そうすることを意識していくなかで、発想力や論理力、表現力などが鍛えられていくのだと思います。
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