塾長トーク
新聞で育む思考力、判断力、表現力 2010年7月 文京区 公立中高一貫校
塾長トーク 7月
峠(とうげ) 一年の折り返し点
「峠」という漢字は、日本で考え出されたそうです。山の上りと下りの境目ということが、よくわかります。
昔は、峠や村境に災いが入ってこないように、また、旅の安全を祈るために道祖神を祭ったそうです。その道祖神にお供え物をささげた、つまり「手向け(たむけ)」たということが、語源だそうです。「たむけ」が「とうげ」に変化していったというわけです。
夏至から十一日目にあたる日から、五日間を、「半夏生(はんげしょう)といいます。農作業がひと段落して、休息を取った時期、また、毒草や大雨を用心した時期でもありました。
七月二日はちょうど一年間の折り返し点です。一年の峠といえるかもしれません。あらためて、一年の旅路の幸せと無事を祈りましょう。
「美人の日本語」(幻冬舎)より
新聞で育む思考力、判断力、表現力
「読売NIE(Newspaper In Education)セミナー」(4月24日)のテーマです。今年で18回目です。新しい学習指導要領や教科書に「新聞の活用」が入り、全国学力テストにも新聞で読解力を試す問題が出題されました。教材としての新聞の有用性に注目が集まっています。新聞各社も積極的に取り組んでいる記事が目立つようになりました。
NIE(エヌ・アイ・イー)とは、いうまでもなく、学校などで新聞を教材として活用することです。
1930年代にアメリカで始まり、日本では1985年、静岡で開かれた新聞大会で提唱されました。89年から日本新聞協会と教育界が協力して組織的に取り組み始め、今年で21年目です。新聞各社も力を入れています。読売新聞でも定期的にカラー見開きの特集を掲載しており、各地の学校に記者を派遣し「出前授業」をしたり、先生向けのガイドや「親子新聞教室」など多彩な事業を展開しています。現在、NIEを実践している国は、70か国をこえ、日本で実践している学校は500校を超えています。
セミナーでの昨年の基調講演は斎藤孝先生、今年は乙武洋匡さんでした。それぞれの講演内容を抜粋してまとめておきます。
斉藤先生は、「言葉の大切さ」と題して、活字文化を推進していくことの重要性を訴えています。
今の学生は、新聞も本もあまり読まず、「活字を読まない人間撲滅運動」が必要であると。新聞は「社会の凝縮」という感じで、川のように流れる社会を毎日すくって見せてくれる。テレビや携帯電話でニュースは十分という人がいるが、それらは細切れで誤解を受けやすい媒体。テレビはまとまった話をするには不向きだが、新聞ははっきり論評できる。認識力を高めるには、書き言葉の力が不可欠である。
日本の昔の教育では、文語体の本をそのまま暗唱させた。夏目漱石や幸田露伴など明治の人は漢字漢文の素養があった。熟語を組み合わせ、文脈を理解する力こそが頭の良さだと知られていた。
話し言葉には、広辞苑に載っているうちの数十分の一程度しか使われない。細切れの知識では発展性がなく、活字を読まない人は的確な表現や論理的な話ができない。プールで泳いでいるのに、海を泳いだ気になっているようなもの。新聞や本を読んでいないと話が散漫になり、そういう人は面接ですぐわかってしまう。
学生によく「私の話が頭の中で漢字に変換できているか」と確認する。人の話を頭の中で活字にしながら聴く力がないと、有益な情報を取り逃がしてしまう。日本の子どもの読解力が落ちているといわれるのに、誰も責任をとらない。自衛するしかない。
活字を読むことで人が理解力を深めるようになると、他人に寛容になれて、社会も安定してくる。言葉に習熟すると自分の気持ちが楽になり、キレにくくもなる。感情も言葉で成り立っている。母語である日本語を通じてしか、世界を理解することはできないわけだから、活字文化を推進していくことはとても重要だと。
乙武洋匡さんは、「教育現場を経験して」と題して、子どもたちとどのように接したかを報告してくれています。
今年三月までの三年間、公立小学校の教員をした。両親や先生など周りの大人に恵まれて成長したので、次の世代に恩返しをしたいと思い、教員の世界に飛び込んだ。いろいろなことを感じたが、まず子どもが何でも聞いてくることに気づく。休み時間に「トイレ行っていい?」、ノートは「ここに一行空けますか」「新しいページにしますか」と尋ねる。ささいなことから大事なことまで自分で判断できない。
だから授業では、「自分なりの答えを出すこと」が出来るように工夫した。例えば、聖徳太子の「十七条の憲法」を扱った授業では、十八条目を考えてもらった。僕らも、これが正解だよというのを徹底的に覚えさせられ、自分の考えを書きなさいというのはあまり言われなかった。自分で考える癖をつけないままだと大人になって困る。その先に、多用な考えを身につけ、色々な方向から見られるようになってほしい。それには新聞はとても有用だと思う。
「最近の子は大変でしょ」という質問を一番多く受けた。子どもたちにそんなに問題があるとは思わなかったが、放課後、携帯ゲーム機に何時間も熱中している姿は昔と違うなと思った。ただ、それを作り、与えたのは大人。大人の変えた社会で子どもも変わらざるを得ない。必死で対応する子どもの起こした問題だけをとらえ、「最近のこどもは」と言うのは無責任だ。
担任になってからは「のび太君でも居心地がいいクラス」をめざした。漫画「ドラえもん」で、のび太君は何をやってもだめですが、あやとりだけは天才的。勉強に限らず、駆けっこが速い、元気にあいさつができるなど、その子の良さを見つけてほめる。教員はそれを周りにも認めさせてあげることが大切。のび太からあやとりを教えてもらう。逆上がりは俺たちが教えてあげるよ、という関係を築けたらいい。生かしあい、補い合うと、もっと伸び伸び生き生き暮らせると思うと。
2010.08.26 投稿者 ikueigk (22:45) | PermaLink
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