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塾長トーク

読書感想文コンクール 2011年3月

 大人しい(おとなしい)  大人の条件

 

 

漢字で書くとおり、語源は「大人」を形容詞化したものだそうです。
初めは、大人びている様子、すっかり成熟している様子を表す言葉でした。
それが分別が備わっている様子をいうようになり、だんだん温和、素直という意味に変わっていきました。
今では静かにしているというイメージが強いようです。
「あの人は大人だ」という時の方が、元来の意味に近いですね。
ところが、もっと遡ると、「大人」の語源は「音無」なんだそうです。音を立てない……つまり、子どものように騒がず、静かに落ち着いているから。といっても、ただ大人しいだけでは、大人とはいえないと思います。
静かに人の話を聴ける人、穏やかに自分の意見が言える人、そして漢字の通り、大きな心を持った人こそ、本当の大人といえるのかもしれません。

                            

「美人の日本語」(幻冬舎)より
 

 

コンクール 

 

第56回青少年読書感想文全国コンクール(毎日新聞社主催)の表彰式が2月4日に行われ、上位入賞者が発表されました。小学校高学年の部で、最優秀賞の「内閣総理大臣賞」に選ばれた、高原楓奈さん(北海道教育大付属釧路小学校6年)の作品に惹きつけられました。
高原さんは、たまたま書店で出会った「ジロジロ見ないで?普通の顔を喪った9人の物語?」(扶桑社)という本の感想文を書きました。この本は、やけど、脱毛症などで「普通の顔」でなくなり、差別や偏見を受けてきた人たちの記録です。高原さん自身、顔の一部にあるあざのため、これまでに16回もレーザー手術を受けてきたのです。
高原さんが伝えたかったのは、ジロジロ見る人にあえて笑顔を返す登場人物たちです。「顔の苦難を精神的に乗り越えた『自分』を、笑顔で伝えたかった」そして、この本が「自分の中の人間性で人生を乗り越えてみせたい」という決意を、自身に与えてくれたことを訴えました。「私の中に、新しい私が誕生した瞬間だった。」と結びました。以下、全文です。

私の中の「自分」が生まれる 

?『ジロジロ見ないで』をきっかけに?

                      6年 高原楓奈

 

私の顔の左半分と頸を、痣が覆っている。
痣を取るための全身麻酔によるレーザー手術をすれば、白い肌が覗くが、再発してまた
手術。
これまでに十六回の入院・手術を繰り返して来た。確かに、入院も手術も苦痛だが、私の心が一番痛むのは、手術後一週間、患部に当てがわれるガーゼだ。顔の半分を覆うガーゼは、私をミイラにしてしまう。人はすれ違い様に私を見る。「どうしたのだろう?」「事故?」「怪我?」「女の子なのに…」様々に視線は語る。
同情や憐れみといった善意と受け取りたいが、その心の発端が異様な者を見た時の好奇心にあることを、突き刺さる視線が私に教える。私は張り裂けそうな心の中で叫ぶ。「お願い。ジロジロ見ないで。」と。
私の叫びそのままの『ジロジロ見ないで』という本。?普通の顔を喪った9人の物語?の副題と共に、「普通」とは言えない九人の顔写真が表紙に並ぶ。皆が皆、笑顔で。
「勇気があるなぁ」が最初の思い。だがすぐに、別の思いが湧き起こった。
「なぜ負い目のある顔を全国にさらしてまで、顔で顔を語ろうと決断したの?」この疑問が、
私を本の世界に引き込む。夢中で貢をめくった。「私にはできそうにない。」との思いを持ちながら。
何枚もの写真と共に、九人それぞれの人生が綴られていた。海綿状血管腫・やけど・リンパ管腫・円形脱毛症……病名や原因は様々。しかし、手術や薬では普通の顔になれないことでは共通していた。顔が原因で幼い頃から陰湿なイジメにあったり、何社受けても就職が不採用になったり…言い尽くせない程の差別や偏見を皆経験している。
「もし私も手術ができなければ同じ思いを。」私には他人事に思えない。胸の芯がうずいた。ところが――。
ある人は、すれ違い様にジロジロ見る相手に、あえて笑顔でお辞儀する。慌てて目線を反らす人の多い中にも、笑顔を返す人もいる。その爽快感を大事にしているのだ。医者から無神経な言葉を浴びせられ、その悔しさをバネに後に看護学の教授にまでなる。
「医療に携わる人は、患者の気持ちがわかる人でいて欲しい」との思いを胸に。この方の心の美しさ、更に、辛さや悔しさの先にある「自分」を持っていることに、私は深い共感を覚えた。
そして私は確信した。九人は、顔の苦難を精神的に乗り越えた「自分」を笑顔で伝えたかったのだ。大きな壁を乗り越えた人の強さと美しさ、自信に満ちた人生の確かな歩みを。
読み終えた私に父が言った。「人間万事塞翁が馬だよ。」そうだ。私は、この痣がある顔のお陰で、入院・手術・ガーゼを繰り返すうちに「患者の心の痛みまでも分かる医師になろう。」という目標が持てたんだ。私の中にも、強くて固い意志を持った「自分」が宿っている。外見を怖れることはない。次の手術は予定を遅らせ、夏休み明けにガーゼのミイラ顔で登校してやろう。人の視線に振り回されず、自分の中の人間性で人生を乗り越えてみせる。
私の中に、新しい私が誕生した瞬間だった。

 

2011.03.12  投稿者 ikueigk | PermaLink | トラックバック(0)